DIYで使用する電動工具。安易に18V以上の製品を選ぶと後悔するかもしれません。
バッテリー式の電動工具には、10.8Vや14.4V、そして18Vやそれ以上のものまで幅広い選択肢があります。その中でも特に工具のバリエーションが多く、幅広く使用されているのが18Vの製品群です。一昔前までは18Vは事実上の最高ランクに位置づけられるモデルであり、今なおプロの現場で多く使用されています。
それではなぜ18Vなのでしょうか?なぜ10.8Vや14.4Vではないのでしょうか?DIYや趣味の木工ではどのタイプを選ぶのが正解なのでしょうか?
18Vが選ばれる理由
18Vが選ばれる理由は主に3つあり「パワー」「作業量」「汎用性」です。
理由その1 パワー
インパクトドライバであれば締め付ける力であるトルク。丸ノコであれば厚い木材を切断しても刃が止まらない力がパワーです。インパクトドライバやドリルドライバを始めとする穴あけ・締め付け工具はトルクという形で明確に表されるので比較しやすい点です。
例えばマキタのインパクトドライバで比較してみます。10.8Vの「TD111DSMX」では135N、18Vの「TD173DX」であれば180Nと3割増しくらいのパワーがあることがわかります。ちなみに自動車のタイヤを固定する大きなナットですら100N程度なので10.8Vでもいかに必要十分なパワーがあるかわかると思います。
理由その2 作業量
次に性能面において18Vが選ばれる最も大きな理由である作業量です。
作業量とは、一度充電したバッテリーを装着してどれだけ長く作業ができるかどうかです。いくつかのデメリットがあるにも関わらず18Vが選ばれる最大の理由と言っても過言ではありません。プロの現場において、作業中に充電が切れたからといってその都度充電をするわけにはいきません。もちろん予備のバッテリーを用意したり、充電できる設備を用意しますが、途中で充電切れを起こさないということは仕事として長時間工具を使ううえで非常に重要です。
先ほどのパワーの項目でも比較した2本のインパクトドライバで比較すると、10.8Vでは標準付属の4Ahバッテリーで320本のネジを締めこめるのに対して、18Vでは6Ahバッテリーで960本と実に3倍もの差があります。
理由その3 汎用性
最後の理由が「汎用性」です。
例えばインパクトドライバではパワーや作業量だけ見ると10.8Vでも十分なシーンも多いものです。しかし、丸ノコでいえば10.8Vではパワー不足ですから18Vが欲しくなります。インパクトドライバは10.8Vを使って丸ノコは18Vを使う場合はバッテリーや充電器の流用ができず、それぞれすべて揃え直すことになってしまいます。
バッテリー自体も高額ですし、今後の工具の買い足しも加味するとできるだけ流用の効くものを持っておきたいものです。
18Vのデメリット
こんなメリットばかりの18Vですが、当然デメリットもあります。それが「価格」と「重さ」です。
デメリットその1 価格
1つ目の大きなデメリットが価格です。
工具自体の本体価格は10.8Vと18Vで比べた場合にはたいてい1.5倍~2倍程度の差があります。
しかし、それ以上に大きいのが消耗品であるバッテリー価格です。10.8Vでは電池容量が4AhのBL1040Bで定価13,200円に対して、18Vでは同じ電池容量で比べても定価20,400円です。ただ実際には18Vの工具を購入する場合は最大電池容量である6Ahを選ぶケースが多いです。あえて小さい容量を選んでもそれに見合うほど価格も下がりませんし、標準で付属したりスペックとして表記されることが多いのも最大電池容量のバッテリーです。18Vで6AhのBL1860Bは24,400円と、10.8Vに比べると2倍近い価格差になります。
デメリットその2 重さ
2つ目のデメリットが重さです。
バッテリー電圧が異なると工具の形状やサイズも異なるため単純比較は難しいのですが、形状が近いインパクトドライバでは1.5倍ほどの重量差があります。この1.5倍の重量差はかなり大きく、実際に持ってみるととても同じ工具とは思えないくらいの重量感があります。特に片手でしっかりと保持しながら扱うこともあるインパクトドライバやドリルドライバは顕著です。よほど力に自信がないと18V製品は持て余してしまうと思います。逆に10.8V工具を持つと軽くて扱いやすくて驚くはずです。
DIYで18V工具を選ぶと後悔する理由
ここまで紹介したように18V工具は重くて高い反面で、パワーは10.8Vでも十分なケースが多いです。
実際の木工シーンで見てみると、インパクトドライバで太い角材に太いネジを下穴なしであけるようなシチュエーションでもない限り、10.8Vでパワー不足が気になることはありません。家を建てるのでもなければ下穴なしで太いネジをバシバシ打ち込むようなことはありませんから、DIYの種類にもよりますが、パワーの面では10.8Vでも十分と言えそうです。
一方で丸ノコのように、よりパワーが求められる工具では18Vが欲しくなります。しかし、丸ノコともなると18Vですらパワー不足になることも多く、コード式の100V工具が欲しくなります。DIYの場合にはプロと違って作業場所は常に同じです。ガレージであったり、作業部屋であったり、家の前の庭かもしれません。こうした作業スペースでは、当然100Vの電源が確保できるでしょうから、そもそも高額でパワーがなく、充電の手間もかかるバッテリー工具を選択する必要すらないのです。
最も注意すべきはインパクトドライバとドリルドライバ
たいていの工具は両手で保持したり、丸ノコのように木材に沿わせて扱います。しかしインパクトドライバやドリルドライバだけは完全に手だけで保持します。18Vがいかに重く、10.8Vがいかに扱いやすいかは是非一度手に取って試してほしいと思います。
私は身長179cm・体重100kg近い肥満体形で、今でこそ加齢で衰えがあるもののそれなりに力自慢ではありました。そんな私ですら18Vは重く、10.8Vのインパクトドライバを持つと手に馴染んでしっくりと来ます。それ以上に顕著なのがドリルドライバで、インパクトドライバと違って回転の反動をモロに受けるため18Vと10.8Vをそれぞれ所有しているにも関わらずほとんど18Vを使うことはありません。確かにパワーは上ですから、スムーズに穴あけができるのですがスムーズな穴あけに一番影響するのはパワーではなくドリルの刃の良し悪しです。