Small ShopではYouTubeへの動画投稿を中心に活動を行っていますが、これに欠かせないのが動画撮影機材です。DIY全般を扱いますが特に多いのは木工関連です。木工作業中は防塵マスクが欠かせないほど粉塵が舞い、これまでも自作の集塵機や大型の空気清浄機を自作・導入してきました。
屋外や半屋外ガレージでの作業であれば粉塵は自然に舞い散りますが、完全に室内の作業部屋のなかでは強制的に換気あるいは濾過しない限り粉塵が舞い続けます。そんななかで動画撮影をするには防塵性能に優れた撮影機材が必要ですが、残念ながら多くの市販の機材はそれほど高い防塵性を有していません。
本稿では粉塵の舞う環境での撮影機材の選び方やポイント、注意点を解説していますが、実際にSmall Shopで使用している撮影機材はこちらの記事の中で解説しています。
カメラとレンズ
撮影の基本となるのがカメラおよびレンズです。カメラは大きく分けて3つに分類することができます。
- 普通のカメラ:一眼レフ、ミラーレス、コンデジ
- アクションカム:GoProやOsmo Actionなど
- スマートフォン:iPhoneやGalaxy、Pixelなど
この中でも最も木工作業に適したカメラは「スマートフォン」です。すべてを使ってきた経験がありますが、それぞれにメリットとデメリットが存在し、今では普通のカメラとスマートフォンを併用する形に落ち着いています。
大前提として木工作業に適したカメラに求められるのは「明るいレンズ」「ズーム機能」「防塵性」です。
普通のカメラ:一眼レフ、ミラーレス、コンデジ
普通のカメラといっても一眼レフとコンデジ(コンパクトデジタルカメラ)には大きな差があります。大きさ、重量、そして機能に価格と差は大きいのですが、いずれも特に安価なものを除けばアクションカムやスマートフォンに比べて美しい映像が撮影できるのがポイントです。
普通のカメラの防塵性能は高いとは言えず粉塵の舞う環境に強いとは言えません。使用後にブラシでホコリを払ったりブロワーで掃除する癖をつけないと寿命が縮む可能性があります。ただ、私が使ってきた感覚からすると粉塵の舞う環境で使用したところで2~3年で故障したり内部にホコリが入ることもなく問題なく使用できています。粉塵が侵入するのは可動部なので、レンズの格納前にブロワー使ったり、定期的にブラシで掃除するだけで十分だと思います。レンズ面の汚れもレンズフードを使用して、撮影は対象からできるだけ離れてズームで撮影することでかなり抑えることができます。
ブロワー | ブラシ |
木工作業部屋にいるからといって間違ってもコンプレッサーのエアブローをしないようにしましょう。 | 専用品のブラシは安価ですが、とにかく綺麗で簡単にホコリを払えるのでおすすめです。 |
木工作業では、引きのシーンから寄りのシーンまで幅広く1つのレンズで撮影できることが重要です。なぜなら粉塵が舞う中でのレンズ交換はカメラ内部に粉塵が入り込む一番の原因であり、極力避けたいものです。また木工作業の現場は決して広々したスペースがあるわけでもないため、広角寄りのズームレンズが求められます。標準付属のズームレンズは基本的に広角寄りのズームレンズなので、まずは標準付属のレンズから始めて、不足があればそれに合わせたレンズを選択すると良いでしょう。また倍率の高いズームを使えば対象物にグッと寄ったインパクトのある映像も撮影できます。粉塵に強いインナーズームレンズがおすすめですが必須要件ではありません。
コンデジに関しては後述する補足で説明するものの、一眼レフとミラーレスであれば安価な製品を選んでも後悔することはありません。特に美しいシーンを撮影したいわけでなければ、現在販売されているエントリーモデルのミラーレスでも全く問題のない必要十分な映像が撮影できます。レンズも標準付属のズームレンズで十分です。
- 良い映像を撮りたい
- 映像にこだわりたい
- 今後映像にこだわっていく可能性がある
コンデジに関する補足
もしコンデジを検討されている場合には、スマートフォンやミラーレスを検討した方が良いかもしれません。いわゆる高級コンデジなどと呼ばれるソニー・RX100シリーズや、リコー・GRシリーズ、キャノン・PowerShot Gシリーズを除けば画質はスマートフォンと大差ないか劣るほどで、機能的にも価格的にもメリットは限りなく少ないです。
スマートフォンほどの広角に対応していない場合も多く、手振れにも弱く、ミラーレスのようにレンズを交換することもできません。低価格のミラーレスと高価格なコンデジは価格が逆転していることも多く、よほどコンデジにこだわりがない限りは低価格なミラーレスかスマートフォンの使用を検討してみてください。
アクションカム:GoProやOsmo Actionなど
アクションカムは優れた防塵性能や雑な扱いにも耐えられる耐衝撃性や高い手振れ補正機能やコンパクトさがあって、木工作業の撮影にも適していると思われそうですが、実際にはそうでもありません。
まず始めに普通のカメラや次に解説するスマートフォンに比べて圧倒的にレンズが暗く、特に室内の作業部屋での撮影では暗く画質が悪くなりがちです。プロモーションムービーにあるような日の当たる屋外では本当に美しい映像が撮影できるのですが、室内に持ってきた途端にガッカリするような画質になります。スマートフォンの方がずっと優秀です。
そのためPOV(胸や頭部などにマウント)することで作業中の手元を映したり、加工している木材に載せてインパクトのある1カットを撮影するような特定のシーンでしか活躍しません。また、こうしたシーンの撮影は作業の進捗を大幅に遅れさせます。つまり面倒くさいです。そこまでして数秒の面白いシーンを映像に差し込みたいというこだわり派の方でなければ、あまり出番はありません。
- インパクトのある面白いシーンを撮影したい
- メインのカメラは別にある
- 映像制作にこだわりたい
スマートフォン:iPhoneやGalaxy、Pixelなど
木工作業に最も適しているのがスマートフォンです。
昨今のスマートフォンはカメラ性能の進歩が凄まじく、特に動画に関してはiPhoneが一歩先を進んでいます。当然のように防水・防塵性もあり耐衝撃性も有しています。粉塵をモロに浴びるような撮影でもビクともせず、適当に服で拭けばすぐに次の撮影に入れます。レンズは室内撮影も考えて明るく、ズームも広角から望遠まで幅広く対応しています。普通のカメラほどボケが効かないことで、ピントが作業中の対象物に合っているかどうかを考えることなくとにかくスムーズに撮影を行うことができます。
価格もカメラと大差ない金額で最新のiPhoneなどを手に入れることができます。またスマートフォンで撮影した映像は、機種によって多少の差はあれパッと見で綺麗に見える風に色味や明るさが自動調整されます。そのため動画編集時にわざわざ色味や明るさを調整したり、シーンごとの差を調整する手間まで省くことができます。
あえて難点を挙げるとすれば以下の3点です。
- 望遠時は画質が落ちがち
- 外部モニターやチルト・バリアングル液晶がない
- 操作はタッチが基本
最近のスマートフォンは望遠撮影にも対応していますが、それでも望遠時は画質が落ちるケースが多いです。木工作業の現場では、三脚を広げるスペースも乏しくカメラを対象物の近くまで寄せられないことが多いです。そんなときに、例えば木材をカットする刃にピンポイントにズームして撮影したい、となるとスマートフォンのズームレンズでは対応できず画質と引き換えにズームすることになります。
また、普通のカメラと違って外部モニターやチルト・バリアングル液晶がありませんから、画角を確認するにはわざわざスマートフォンの裏側に回る必要があります。操作もタッチが基本ですから、作業で汚れた手や手袋をした状態では操作が難しくなります。
- 撮影に時間を取られたくない
- それなりに綺麗な映像を手軽に撮影したい
- 動画編集に時間を取られたくない
アクセサリーに関するポイントと注意点
カメラやレンズ以外のアクセサリーは使用環境に応じて適したものが必要になりますが、いくつかのポイントを解説します。
1.三脚での撮影では機械の振動に気を配る、吊り下げアームが便利
通常の三脚を使った撮影では、床から伝わる振動のせいで映像が小刻みにブレでしまうことがあります。一番の対策としては床を厚く強固にすることで、一般家庭の居室で作業している場合にはフローリングを重ね張りするだけでも劇的に改善が見られます。
床自体の改修が難しい場合には、しっかりとした太い脚の三脚を使用し、振動を吸収できるように三脚と床の接触面に適当な布を一枚敷くことで改善できる場合があります。また、もし可能であれば天井からカメラアームなどを使ってカメラを吊り下げることができれば振動を気にせず作業することができます。
2.粉塵を避けるにはフードを装着してズームを活用する
粉塵がレンズに付着して映像にホコリが映り込んだり、映像がぼやけたようになることがあります。
普通のカメラであればレンズフードを装着することで、粉塵がレンズに付着するのを防ぐことができます。レンズフードが装着できないスマートフォンなどでも、簡単な板などで庇を作ってやることで粉塵の付着を大幅に減らすことができます。粉塵は一度舞い上がって、人の動きや機械からの風で舞い上がってから降り注ぎますのでこうした対策が有効です。
また、粉塵が直接レンズに飛んでくるような状況を避けるために、できるだけ撮影の対象からカメラを離してズームを活用して撮影すると粉塵の影響を受けにくくなります。
3.モバイルバッテリーで給電する
木工作業の撮影は長丁場になりがちです。
一度撮影を開始して必要なシーン分の作業をしてまた録画をオフにする。こんな工程を繰り返すと作業がなかなか捗らないため、必要なシーンを撮り終えてもそのまま作業を続行して、一段落ついたタイミングで録画をオフにすることが多いです。特に一人で撮影と作業をこなす場合には日常茶飯事なので名が回しを前提にモバイルバッテリーで給電しながら撮影すると良いです。
粉塵の舞う中でのバッテリー交換も、カメラ内部へのホコリの侵入の原因になるため、できればUSB給電をしたり、ダミーバッテリーとモバイルバッテリーをつないでできるだけカメラのカバーを開閉しないようにすることが重要です。
4.照明は過剰なほどあると良い
カメラのズームレンズの明るさは短焦点レンズに比べると低くなりがちで、室内の撮影では薄暗い映像になりがちです。明るいレンズを装着したスマートフォンでも、室内が暗いだけで画質がかなり悪くなります。
特に完全室内の作業部屋での撮影では、カメラの良し悪しより部屋全体の明るさが画質に大きく影響します。例えば10畳の部屋に18畳用の明るいシーリングライトを取り付けると、人の目からすると十分に明るくなるのですが撮影には足りません。また光源が一点になるので影ができがちです。
そのため天井全体をカバーするように蛍光灯タイプ照明を並べると画質はグッと良くなります。最近では安価で工事不要なLED蛍光灯も販売されているため、画質に不満がある場合にはカメラやレンズより先に照明の追加を検討すると良いでしょう。
5.マイクはこだわらない
マイクはカメラやスマートフォン本体の内蔵マイクで十分です。
外付けのマイクは都度適切なセッティングができない限りはおすすめしません。人が会話するシーンを撮るのであれば良い選択肢ですが、丸ノコやルーターといった木工作業の騒音を取ると正常に録音ができずとんでもないノイズまみれになることがあります。
一方でカメラやスマートフォンの内蔵マイクであれば、騒音は騒音のまま録音してくれるため後から音量を調整してやれば良いだけです。特に木工作業シーンでは内蔵マイクが優秀です。