木工に使用する電動工具のうち、バッテリーで駆動する工具には7.2Vから60Vまで幅広い電圧のバリエーションが存在します。そのなかでもプロ/DIYを問わず主流となっているのが18Vで、高電圧な36Vや40V、60Vなどが登場してもなお18Vはバッテリー工具の主力です。18Vより小さなものでは根強い人気のある14.4Vや工具とバッテリー重量や価格を抑えた10.8Vの人気が高く、それより小さな電圧になると工具のバリエーション自体が少ないため用途が限られてしまいます。
18Vは趣味からプロの現場まで幅広く利用されることもあって価格はやや高めで、中古になっても価格が大きく落ちることはありません。また本体も大きく重量も重くなるため10.8Vなどの手頃な工具を候補に入れる方も多いと思います。10.8Vと18Vの違いは重量と価格、そしてパワー・作業量・バリエーションの5点です。
重量
基本的に電圧が高ければ高いほどバッテリーを含む本体は大きく重くなります。例えばマキタのインパクトドライバを見てみると、10.8Vでは1kg程度なのに対して18Vでは1.5kg、40Vでは1.6kgと重くなります。18Vと40Vの差が不自然なほど少ないのは18Vに標準付属するバッテリー容量が6.0Ahなのに対して、40Vでは2.5Ahと容量が半分以下だからです。
10.8Vを選べば軽くてコンパクトで取り回しが良いし、18Vでは大きくて重いです。私は比較的体格に恵まれていますが、それでも18Vのインパクトドライバやドリルドライバーはやや大きく重く感じます。僅か500gの差なのですがこれが非常に大きく私は普段10.8Vを愛用しています。
逆に片手で完全に保持する必要のないランダムサンダーのような研磨工具や木の上を滑らせる丸ノコなどの切断工具やトリマーなどは重量が気になることはあまりありません。変わった工具としてはビスケットジョイントカッターは重心の関係もあり腕が非常に疲れます。
そのため力に自身のない方や18Vの工具が重くて困っているという方は10.8Vが有力な候補にあがります。また単純に18Vを価格やパワー、作業量の面で選択する必要がない場合には軽くてコンパクトな10.8Vを選ぶ価値があります。
価格
同じくマキタのインパクトドライバを例にとると10.8Vは定価34,200円なのに対して18Vでは83,000円と2倍以上の価格差があります。また中古でも需要が高いため価格が落ちにくいです。この価格差は本体だけでなくバッテリーの価格も大きいです。
10.8Vを選べばインパクトドライバ1本だけでも5万円近い価格差があるとなると、趣味の木工では悩ましい問題です。価格に関していえば、コード式のAC100Vの工具であれば価格も安く十分パワフルなので、利用シーンによってはコード式を検討してみても良いかもしれません。
パワー
10.8Vと18Vではパワーにも差があります。インパクトドライバを例に取れば、10.8Vでは135Nmの締め付けトルクがあるのに対して18Vでは180Nmと約1.3倍の差があることがわかります。
具体的にこの差を説明すると、太い柱に長さ105mm・呼び径4.8mmの太くて長いネジを下穴なしで打ち込むと10.8Vでは打ち込みに時間がかかります。また連続で作業を続けると過熱してセーフモードに入って冷却が済むまで動作しなくなります。
実際にこんな作業をすることはあまりないと思います。特に趣味の木工では仕上がりを綺麗にしたり割れを防ぐために当然下穴を空けますし、無理にネジを打ち込むこともしません。つまり、10.8Vでも全く問題なく使うことができます。重量の項目で説明したように、私自身インパクトドライバに関しては10.8Vを愛用しています。またそもそもバッテリーのパワーがほとんど影響しないピンタッカーなども10.8Vを使用しています。特に趣味の木工家のなかではコンパクトなインパクトドライバーを好む方が一定数います。軽くて使い勝手がよく、過剰なパワーで木を破損させる心配もないためです。更に丁寧な作業をする方もいて、インパクトドライバを使わずにドリルドライバーでネジを打ち込む方も見られます。
マキタ(Makita) 充電式インパクトドライバ 10.8V 小型 白 本体付属バッテリー1個搭載モデル TD090DWSPW
その一方でパワーが求められるドリルドライバーや丸ノコなどの切断工具ではパワー不足が顕著です。ドリルドライバーは同じドリルビットを使用しても18Vだと非常にスムースに穴あけできますし、大き目の穴を空ける際も止まることがありません。また10.8Vの丸ノコは12mm厚の合板を切るだけでも少し送るスピードが速いと刃が止まってしまいます。
作業量
10.8Vと18Vでは標準で付属するバッテリーの容量が異なります。10.8Vでは4.0Ah、18Vでは6.0Ahと電池容量の差もありますが、そもそもパワーに余裕のある18Vではバッテリーの消費も少ないです。
製品仕様によれば、長さ65mm・呼び径4.3mmの木ネジを合板に打ち込む場合に10.8Vでは320本に対して18Vでは960本と実に3倍です。趣味の木工ではそれほど多くネジを打つことは少ないかもしれませんが、これがバッテリー消費の激しい工具になると顕著な差が現れます。特に丸ノコなどに関しては18Vですらバッテリーの消費が激しく、たくさんカットしようとするとあっさりとバッテリーの残量がなくなってしまいます。
バリエーション
パワーや価格など性能以上に悩ましいのがバリエーションの差です。そもそも10.8Vはパワーが不足気味なこともあって、丸ノコは非常に小さなものしかありませんし、サンダーやトリマーなどの研磨や切削工具もありません。製品数でいえば10.8Vの工具は18V工具の3分の1しか存在しません。
そのためインパクトドライバを10.8Vで済ませたとしても、丸ノコを買おうとすると18Vを選ぶことになってしまいます。そうなると充電器もバッテリーも別々に必要です。バッテリーや充電器を統一するために18Vですべての工具を統一するか、使い勝手を優先して一部を10.8Vやバッテリー式でない100V工具にするかは各々の使用環境や用途によって変わってきます。
まとめ
趣味の木工であれば一部の工具は10.8Vで十分です。むしろ軽量・小型・安価な10.8Vの方が利点が多いといえます。一部の工具とはバッテリーの電圧が大きくなってもパワーが変わらないものや10.8Vでもパワーが十分にあるものです。例えば以下のような工具です。
- インパクトドライバ
- ドライバドリル
- ピンタッカー
- レーザー類
ただし、小屋を建てるために一日中ネジを打ち込み続けるような作業をするのであればパワフルで作業量が多い18Vのインパクトドライバがお勧めです。大きな穴や高負荷な穴あけ作業が必要な場合も18Vのドライバドリルがお勧めです。
逆にそれ以外のパワーや作業量が求められる工具は18Vを選んだでバッテリーを統一していく方が良いでしょう。