【木工Q&A】風量型と高圧型の集塵機の違いとは?

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集塵機はサイズや風量で仕様が比較されがちですが、実は大別して風量型と高圧型に分類できます。それぞれ用途も異なっており、用途にあわせた選択をしないとせっかく高額な集塵機を買っても期待した働きをせず後悔してしまうかもしれません。

よく見かける集塵機のタイプが以下の3種類です。

京セラ AVC1150マキタ 410ムラコシ MY-75X
高圧型バランス型風量型

京セラ・AVC1150のような掃除機タイプの集塵機や多くのコンパクトタイプの集塵機はDCモーターで駆動する「高圧型」であり、その名の通り風圧が強いです。その一方で風量は低いです。風圧は集塵機の仕様でいうところの静圧や真空度という単位であらわされ、京セラ・AVC1150の静圧は25kPaです。

一方で風量型のムラコシ・MY75Xのような比較的大型の集塵機は「風量型」であり誘導モーターで駆動します。静圧は2.2kPaで高圧型である京セラ・AVC1150の10分の1以下しかありません。一方で風量は毎分13立方メートルで、京セラ・AVC1150は毎分3立方メートルしかないことから大きな差があります。

以上2機種の説明から察しが付くように現実的な機械として風圧と風量の両立は難しく、風圧を高めると風量は減り、風量を高めると風圧が減ります。この中間くらいの性能を持っているのがマキタ・410です。風量と静圧の関係を図に示すと以下のようになります。

京セラ AVC1150マキタ 410ムラコシ MY75X
風量毎分3.0m3毎分8.8m3毎分13m3
静圧25kPa5kPa2.2kPa
付属ホース径38mm75mm100mm
スペックで示される風量は静圧はほぼ抵抗がない状態で計測されており実際の吸い込み口で計測すると結果が変わります。

どれを選ぶべきか?

この3機種のうちのどれを選べば良いでしょうか?

これは使用する環境や工具によって異なりますが、大まかに説明すると広範囲の集塵には風量型、狭い範囲の集塵には高圧型が向いています。ただこの説明は現実の趣味の木工の世界にはあまり即していません。具体的な工具でいうと、ランダムサンダーのような研磨工具、丸ノコのような切断工具、トリマーのような切削工具に代表される手で持って使う工具には高圧型が適しています。なぜなら集塵ポートと集塵の発生源が近く、なにより手で持って取りまわす際に太いホースでは邪魔になるからです。

風量型の集塵機に細いホースを接続するとせっかくのモーターとファンの力を発揮しきれず風量は著しく低下します。逆に高圧型は蛇腹状の細いホースのような大きな抵抗にも強いです。具体的には大型集塵機に50mmのホースを接続すると風量は50%以上低下し、38mmのホースを接続すれば手のひらにつけてもくっつきもせずポロリと落ちてしまうほど吸わなくなります。風量型は大きなファンがゆっくりと回転するため風圧がなく、そのため抵抗に弱く太いホースを接続しないと力を全く発揮できません。100mmのホースを作業台近くまで伸ばして、手元で50mmや38mmのホースに変換すると更に大変です。ホースを細くした時点で風量も風速も低下して、なんとか吸い込んだ粉塵も太さが100mmに戻ったあたりで遅すぎる風速により滞留してホース内で粉塵が溜まってしまいます。

このような説明を聞くと風量型を選ぶ意味が薄れそうですがそんなこともありません。高圧型の集塵機は小さなファンが高速回転することで高い風圧を発揮しています。ここに太いホースを接続したところで風量はそれほど上昇しないどころか、風量型に細いホースを接続したときのように吸引力は激減します。また高圧型は粉塵の発生源と吸い込み口が近ければ吸引できるものの、そもそも風量が小さいため広範囲の集塵ができません。

風量型の集塵機はホースを細くさえしなければ非常に強力に吸引します。吸い込み口に手をかざすと手が持っていかれそうになるほどです。とはいえ100mmのホースを手持ちの工具につないでは邪魔すぎて使い物になりませんから、据え置き型の工具には風量型の集塵機が適しているといえます。据え置き型の工具は大きな木くずが大量に発生したり、集塵ポートから粉塵の発生源までが遠かったり空間が広かったりするため風量型でないとまともに集塵できないわけです。具体的にはスライド丸ノコ、卓上丸ノコ、テーブルソー(丸ノコ盤)や自動カンナ、手押しカンナなどが該当します。

バランス型の存在意義は?

以上の説明からすると手持ち工具に高圧型、据え置き工具に風量型を選ぶべきでありバランス型の存在意義が危うく感じられます。しかし、現実の趣味の木工ではこのバランス型が最も汎用性が高いです。

なぜなら風量型の集塵機には細くても100mmのホースが付属しますが、家庭用の100V電源で使用できる電動工具では100mmの集塵ポートはほとんど存在しません。ほぼすべての工具で50~75mm程度です。三相200Vの電源で駆動する工具があれば有効なのですが、残念ながらDIY大国とは違い日本ではそうした大型工具が趣味の木工家にとって手に入りやすい状況にありません。

またバランス型のマキタ・410は風圧も多少はあるためホースの直径を細くしてもある程度は使用可能です。むしろ風量型の集塵機を買って50mmの集塵ポートに接続するならバランス型を買った方がうまく集塵できる可能性が高いです。そのため日本で趣味の木工を楽しむだけであればマキタ・410のようなバランス型の集塵機がピッタリと言えます。(むしろバランス型を販売してくれる会社があるだけありがたい状況です)

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ただし、残念ながらマキタ・410を手持ち工具に接続するために細いホースに変換すると吸引力は高圧型に負けます。純正でアダプタも販売されていますが、マキタ・410と京セラ・AVC1150のような高圧型の集塵機の2台体制が趣味の木工家のために最適なセットアップと言えるかもしれません。

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