テーブルソーって必要?いらない工具と必要な工具の見極め方

木工

DIYを続けていると常に気になるのが新しい工具の存在です。

その中でも特に手を出しづらい工具といえば、場所を取る据え置き型や高額な「購入に勇気がいる工具」です。こうした工具は1つあれば何もかも対応できるオールラウンダーではなく、それぞれに明確な用途が設定されています。その工具がなかった場合の代替手段も存在するため、買ったはいいけど使わない、置き場所に困ってしまうなど後悔する羽目になりがちです。

そこで、ここではDIYでは「購入に勇気がいる工具」についてデメリットに着目しながらその代替手段の存在や使い道、選び方から実は不要なケースなどいろいろな観点からコメントし、購入を躊躇っている人の一助になればと思います。

テーブルソー

購入に勇気がいる工具のナンバー1が「テーブルソー」です。

テーブルソーは横挽き・縦挽き・角度挽きから傾斜切りまで幅広く対応できるオールラウンダーに限りなく近い切断工具です。製品によっては複数枚のチップソーを組み合わせて使用するダドーブレードで溝を切ったり、溝切カッターを装着して幅の広い溝を切ることもできます。

本格的にDIYを始めるとどうしても気になってしまう工具ですが、いくつかのデメリットも存在します。

デメリット1.広いスペースが必要

テーブルソーは基本的に据え置き型工具であり、安全に使用するには容易に動かないようにしっかりと据え置いて使用する必要があります。つまり、ガレージや庭などに使うときだけ持ち出して使うのには適していません。ポータブルを謳う携行性に優れたテーブルソーも存在しますが、コンパクトであるがゆえにガイド位置に制限があったり、精度が低いなどせっかくのオールラウンダー性能を落としてしまうことになります。

また、固定したテーブルソーの上に木材をスライドさせることでカットする性質上、大きな木材をカットするには前後左右に十分なスペースを確保する必要があります。このスペースが確保できないと、結局は手持ちの丸ノコでカットすることになってしまいます。

デメリット2.精度の低いポータブルか、三相電源が必要になる

テーブルサイズやガイドが小さく精度も劣るポータブルタイプのテーブルソーは、現場に持ち込んで使用することを想定しており100V電源で駆動します。つまり家庭のコンセントに接続して使用することができるのですが、きちんとした据え置き型のテーブルソーとなると三相電源が必要になり、別途電気工事や電力会社との契約が必要になります。

また、DIY大国であるアメリカとは違って日本ではDIY用のテーブルソーの選択肢が限られます。ポータブルタイプのテーブルソー以外はホームセンターや通販では容易に手に入らず、一部輸入品を扱うお店もありますが高額かつ輸送や搬入・設置の手間もあり入手に大変苦労します。メーカーに直接打診をして購入することもできますし、オークションサイトなどで中古品を手に入れることもできますが、いずれにせよポータブルタイプ以外の入手性が非常に悪いのが日本の現状です。

デメリット3.治具が必要

テーブルソーは、テーブルから丸ノコの刃がせり上がってくる非常にシンプルな機械です。

これを使って様々なカット加工が可能ですが、そのために木を固定するための多種多様な治具を用意する必要があります。国内で入手性が良いポータブルタイプのテーブルソーの場合は、こうした治具をセットする溝の規格などが専用サイズで市販の治具が使用できないことが多いです。そのため治具をすべて自作し、また自作した治具を保管するスペースも必要です。木で治具を作成した場合には重量もそれなりに出てしまうので、仕様のたびに治具を出し入れするのも結構な手間がかかります。

1種類の加工作業を大量の木材に対して繰り返し行う場合には有効ですが、数カットするだけであれば手持ちの丸ノコにしっかりと定規をあてがってカットした方が手っ取り早いことが多いです。横挽きに関しては精度も手軽さもスライド丸鋸や卓上丸ノコが上回ります。

デメリット4.溝切の選択肢

最後のデメリットは溝切に関するものです。

テーブルソーを使って溝をカットする様子を見たことがある方も多いかもしれませんが、基本的には複数のチップソーをシムを介して重ねて使用するダドーブレードや溝切カッターを使用します。例えばマキタ製のポータブルテーブルソーである2703では、同社の溝切カッターを使用することができます。

しかし、仕様には専用のワッシャーやスペーサーなどが複数必要で刃の交換はかなりの手間です。また、ダドーブレードに関しても小型のテーブルソーではスピンドルの長さの都合で安全に使用できないケースもあります。そもそも溝を掘るならルーターやルーターテーブルを使用した方が綺麗で手っ取り早いことも多いです。

スライド丸ノコ・卓上丸ノコ

スライド丸ノコや卓上丸ノコは主に横挽きに特化した工具で、角度切りや傾斜切りにも対応します。

先述したテーブルソーに比べれば精度も出しやすく安全かつ扱い方も容易で、テーブルソーに比べればデメリットが少なく広くオススメできる工具といえます。現場へ持ち込んで使う用途から、据え置きで使う用途まで使い方も幅広く、人気工具なだけあってコード式からコードレス、刃のサイズなど幅広い選択肢があり、デメリットも解消されています。そんななかでもいくつかのデメリットは存在します。

デメリット1.粉塵が舞いやすい

スライド丸ノコと卓上丸ノコは、数ある切断用工具のなかでも特に粉塵(切断時に発生する木の粉)が舞いやすいです。粉塵は塵肺など身体への影響が非常に大きく、特に安全管理が行き届かないDIYでは十分に気を付ける必要があります。

この粉塵の対策として集塵用のポートが設けられているのですが、残念ながら集塵機を接続してなお粉塵の舞い上がる量は非常に高いです。もはや構造上避けられないレベルで粉塵が発生します。

デメリット2.スライド丸ノコは精度が落ちやすい

卓上丸ノコはシンプルに刃を下に降ろすだけのメカニズムなので精度も良いのですが、スライド丸ノコとなると前後の動きが追加されます。そのためどうしても精度が下がったり、長期の使用でスライド機構が劣化して精度が落ちたりします。この2023年現在ですら、新品時から振動や精度が狂いやすいといわれる製品が存在することからも、いかにスライド機構と精度の両立が難しいかが想像できます。

デメリット3.刃のサイズの選択

スライド丸ノコや卓上丸ノコのチップソーは165mmなどの小径のものから380mmなどの大径のものまで幅広いです。基本的に刃の径が260mm以上は持ち運びは難しく、そもそも持ち運びを想定されていない作りになります。基本的に持ち運びをするなら165mmを選択することになると思います。

しかし、165mmを選択するとスライド丸ノコですら切断できる木材の幅は200mmに届きません。これは大きな刃を装着した卓上丸ノコとほとんど変わらないスペックです。最も幅広く使えそうなのは大きな刃を装着したスライド丸ノコですが、刃は高額で据え置きに必要なスペースもそれ相応に求められます。

大きな工具であり、使い方も簡単、精度も出るし作業を一気に効率化できる便利アイテムですが、バリエーションが多すぎるゆえに「どのサイズを選ぶか」「スライド機構は必要なのか」「持ち運びするのか」など選択肢が多く、どれかと誤ると後悔が残り続けることになります。

例えば先述したテーブルソーを持っているのであれば、そもそもスライド丸ノコや卓上丸ノコはいらないのかもしれません。しかし、テーブルソーで長い木材をカットするにはテーブルソーの左右に広いスペースとサブテーブルが必要です。こんな風に使用シーンをよく考え、適材適所で使い分けを考えながら選択する必要があります。

バンドソー

あったら絶対に便利だけど、なくてもなんとかなってはいる、でもほしい。そんな工具が「バンドソー」です。大きな木材を縦挽きしたり、細い刃を取り付けて曲線挽きをして糸のこ盤のように使用することもできます。メインでバンドソーが必要なことはないけど、工程のなかでバンドソーがあればすごく便利だったり、今までできなかった加工が可能になります。

デメリット1.刃はぶれやすく切断面の仕上げが必要

バンドソーは癖があって綺麗な直線挽きが難しいです。どれだけ熟達して、よく研ぎ直された刃を使ったとしても、切ったあとはプレーナー掛けをするなど再仕上げが必要です。曲線切りに使った場合もやはり再仕上げが必要です。バンドソーの刃はテンションがかかっているもののブレが完全に消されてはおらず、精度の良いカットも困難です。ざっくりと形に切り出すときに使う工具といえます。

デメリット2.懐が狭く小回りが意外と効かない

バンドソーは上下に車輪があって、それを縦に接続しています。

この構造から、どうしても上下の車輪をつなぐ構造部に木材が干渉して大きな木材を切り回すことが難しいです。このキャパシティを上げるには車輪の大きさを大きくするしかありませんが、そうすると工具自体が非常に大型化し、また国内では入手が難しくなります。

ブレードはぐるっと一周つながっている構造ですから、ジグソーや糸のこ盤のように木材の中心を加工することはできません。特に分厚い木材をカットしないのであればジグソーでも十分ですし、ジグソーの方が小回りが利いて使いやすいことも多いです。

デメリット3.入手性が悪く刃の選択肢も少ない

日本国内で手に入る多くのバンドソーは非常に小型な8インチ(約205mm)以下の製品です。

8インチというのはバンドソーの上下にある車輪の直径で、バンドソーの大きさはこの車輪の直径で表現されることが多いです。8インチ以下の小型バンドソーではデメリット2で挙げたような懐の小ささから小さな木材しか加工できなかったり、車輪自体も薄くコンパクトなので、刃のバリエーションがほとんどありません。

10インチ以上からようやく普通のバンドソーらしくなってきて、刃の幅を用途にあわせて選択したり、刃のピッチを選んで繊細なカットをするのかスピーディにカットするのかを選択出来たり用途の幅が広がります。刃は海外に目を向ければいろいろなメーカーからいろいろなスペックの刃が販売されていますが、国内で輸入販売されている製品は限られており、こちらも入手性があまりよろしくありません。

10インチ以上の製品として日本で長く販売されているのはREXON社製の10インチバンドソーである「BS-10K2」です。新品でも手頃であり、中古でも流通が多いため中途半端に小さなバンドソーを買うならこうした10インチ以上の製品を試してみると良いと思います。10インチバンドソーのサイズ感はこちらの動画を見てもらうとわかりやすいと思います。

手押しカンナ(ジョインター)

ホームセンターなどで販売される乾燥済みの木材を使わない場合に欲しくなってくるのが「手押しカンナ」です。

手押しカンナは直角や平面の出ていない木材の直角や平面出しを行うことができる工具です。電気カンナが上下逆さに取り付けられており、その前後にテーブルがあります。ホームセンターで販売されている乾燥済み・プレーナー済みの綺麗な木材を使う場合にはほとんど出番はありません。

しかし、材木屋さんから好きな樹種の材木を仕入たり、ホームセンターに販売されているものでも仕上げがされていない荒材を使う場合には必要になります。

デメリット1.習熟に時間がかかる

手押しカンナは綺麗に平面を出すためにいくらかの練習が必要になります。手で持って扱うことができる電気カンナなどと比べると力加減に慣れが必要です。また、回転する刃が露出している構造上、ブレードガードがあるとはいえケガのリスクも高い部類の機械といえます。

デメリット2.電気カンナや自動カンナで代用できる

手押しカンナは平面・直角を出すことができますが、すべての工程を手押しカンナで行うことはありません。

基本的に1つ目の面の平面を出して、その面を基準にもう1面の直角と平面を出します。この後は自動カンナで仕上げることが多く、結局手押しカンナだけあっても全面プレーナー掛けを行えるわけではありません。できないことはないですが手間がかかります。

また、手押しカンナで扱えるのは手押しカンナ上を安全にスライドできる大きさ・重さの木材までで、それ以上は電気カンナを使った手作業が必要です。逆に小さな木材であれば電気カンナを使った方が手っ取り早いことが多いです。手押しカンナと電気カンナの関係はテーブルソーと丸ノコの関係にも似ています。

更にどのみち自身でプレーナー(カンナ)仕上げをする場合には自動カンナが必要になります。自動カンナがあると、最初の1面の平面出しから自動カンナで行うことができます。簡単な治具は必要ですし、手押しカンナより治具にセットする手間がかかりますが、大量の木材をプレーナー仕上げするわけでもなければこれで十分ということも多いです。

デメリット3.場所を取る

手押しカンナはしっかりと据え置きしたうえで使用する必要があるため、多くの工具のなかでも特に場所を取ります。

デメリット4.高額

手押しカンナはこれまで紹介してきたデメリットにある通り、代替がきいたり場所を取ることもあって、流通量がそれほど多くありません。新品でも中身の構造から考えると少し割高ですし、中古で出回る数も決して多くないため結果的に割高で購入することになりがちです。

自動カンナ(プレーナー)

木材の仕上げや平面出しに便利なのが「自動カンナ」です。

使い方次第では全面のプレーナー仕上げを行うことができ、比較的コンパクトで扱いやすい製品も多数存在することからDIYを始めてある程度道具が揃ったころに欲しくなってきます。流通量も多く、中古で安価に手に入れることもできることからデメリットはかなり少なく、とりあえず持っておいて損はない道具です。

デメリット1.メンテナンスが必要

自動カンナの構造は非常にシンプルで、回転する刃とその前後に木材を送るローラーがあります。この刃とローラーの一式が上下に動くことで、高さを調整することができます。

自動カンナは高速に回転する刃が木材を削るため、削りカスや粉が多くでるため、このメカニズムに大量の粉塵が付着して動きを悪くします。また、安易に潤滑スプレーなどを使うとローラーに付着して木材の送りがスムーズにいかなくなってしまいます。

そのため使用の後は昇降機構のネジの汚れを落として乾燥タイプの潤滑スプレーを吹くほか、ベースの潤滑とゴムローラーの清掃が必要です。

デメリット2.集塵が必要

高速の刃が木材表面を削り取る自動カンナでは削りカスが大量に発生します。

これは手押しカンナも同様ですが、手押しカンナは構造上削りカスが下に溜まっていくのですが、自動カンナでは真横に向かって大量の削りカスが撒き散らされます。集塵ポートがない製品もありますが、ある製品であってもある程度パワーと容量のある集塵機でないと一瞬でパンパンになって使い物にならなくなります。またパワーがない集塵機では、タンクがいっぱいになる前にホースで削りカスが詰まるケースも非常に多いです。家庭用の掃除機や、掃除機タイプの集塵機では力不足です。

部屋中が削りカスまみれになるのを諦めるか、しっかりとした集塵機と組み合わせる必要があります。

ボール盤

あんまり迷うことがないかもしれませんが、DIYでは必須級のアイテムがこの「ボール盤」です。

とにかく直角に真っすぐ穴をあける必要性が出るシーンは少なくありません。金属の穴あけや木材の大きな穴あけもしっかりと木材を固定して真っすぐに刃を送る必要があります。そんな時に必ず必要になるのがボール盤です。

デメリットを挙げようと思いましたが、昨今では必要十分な機能やパワーを持った安価な製品もあり、持っていて間違いなく損はありません。中古での流通も多いです。

ジョイントカッター

ダボやビスケットジョイント、ドミノジョイントをするための専用加工工具がこのジョイントカッターです。DIYがまだまだ浸透していない日本ではあまり一般的な工具ではありませんが、ダボジョイントのためのダボ穴をあけたり、ビスケットジョイントのための細長い穴をあけたり、ドミノジョイントのための横長の丸穴をあけるための専用工具がジョイントカッターです。

ルーターやドリルガイドなどで代用もできますが、専用工具があることで効率は劇的に向上します。国内ではマキタのビスケットジョイントカッターくらいしか見当たりませんが、海外に目を向けるといろいろな製品が見つかります。ドミノジョイントカッターはFestoolの超高額な製品しか選択肢がないためあまり注目されることがありません。

実際にマキタのビスケットジョイントカッターはこちらの動画で紹介されているのでチェックしてみてください。

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