【木工Q&A】ポケットホールとは?

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ポケットホールとはKreg社が開発した木材の接合手法のひとつです。手軽で見た目に影響を与えない点が特徴の接合手法で、専用ツールを使用する必要があります。また、大きな消耗品である専用のビスも一般的な規格とは異なる形状をしており容易に代替ができません。

非常に便利な手法ですが多くのメリットとデメリット、そして注意点があります。

ポケットホールのメリット

ポケットホールのメリットは手軽さが挙げられますが、それ以外にも多くのメリットが存在します。

1.手軽さ

一番のメリットは短い作業時間で接合することができる点です。専用ジグを使って穴を開け、ビスで止めるだけです。シンプルなビス止めとそれほど変わらない作業時間で接合することができます。

2.内側から接合できる

通常のビス止めでは、木材同士を固定して外側からビスを打ちます。しかし、ポケットホールでは内側からビスを打つことができるため、リフォームや家具の改修などで外側が壁のなかに埋め込まれている場合や、外側が綺麗に化粧されていたり塗装されている場合にも使用することができます。

3.見た目が良い(ビスを隠しやすい)

ポケットホールで接合した後のビスの頭は穴のなかに完全に隠れており、また内側からビスを打ち込むことができるため表面上見えない位置に隠すことができます。結果的に見た目が良くなり、埋め木などを使ったビス頭を隠す手間がかかりません。

4.着脱が可能

ポケットホールはビスを打ち込む位置が特殊なだけで、基本的にはシンプルなビス止めです。そのため後からビスを外して構造を変更したり、分解が容易に行えます。

5.十分な強度が得られる

ポケットホールは正しい手順と道具を使うことで、十分な接合強度を確保することができます。

これは強度をビスにだけ依存するような構造的な問題点がある場合や、特に頻繁に力がかかるような場所でなければ十分な強度があるということです。例えば引き出しなどの箱型の構造物を作る場合、接合強度が低くても箱型という強固な構造により構造物として十分な強度を得られます。家具を始めとした一般的な構造物や伝統的な形にはこうした構造的な強度が得られる設計が練りこまれており、ポケットホールだからといって強度が不足することはほとんどありません。

ポケットホールのデメリット

ポケットホールは手軽で扱いやすい接合手法ですが多くのデメリットも存在します。

1.専用ツールと高価な専用ビスが必要

ポケットホールの穴を開けるには専用のジグが必要です。また、専用のドリルビットも必要になります。いずれも自作したり工夫により解決することができますが、それでは大きなメリットである手軽さを損なうことになってしまいます。また、ジグに関しては安価な製品も多数販売されています。ノーブランド品が多いですが、検討してみても良いかもしれません。(実際に私はこちらの製品を使用しています)

更に大きな問題として専用ビスが必要です。ポケットホール用のビスは一般的な規格には存在しない専用設計で、ナベワッシャーヘッドタイプのタッピングネジやシンワッシャーヘッドタイプの木ネジなどが近い形状をしていますが、前者はセルフタッピング(先割)がない、後者はネジ頭が大きく使用できないなど専用ビスの使用を促すうまい仕組みができあがっています。

一応ナベワッシャーヘッドタイプの1種A形ネジの呼び径3mmのものであれば代替として使用することができます。

2.木目(木理)によって強度が変化する

ポケットホールは割れが生じやすい木の端部をワッシャータイプのネジ頭を使用して最大限負荷を分散して木材同士を接合します。また相手側の木材に対して下穴を開けないためネジを打ち込む深さもやや浅めです。結果として木の疎密や木理によって強度が変化し、基本的にあらゆる接合方法のなかでも強度が低い部類に位置します。

しかし、メリットの項目で挙げたように最低限の強度が得られるため構造と使い所を選ぶことで十分な強度が得られます。また、専用ツールは比較的近い位置に2か所のビスを打ち込むことが想定された作りをしており、これにより単純に負荷が半分に分散されるため有効な解決策になり得ます。

ポケットホールの使い所

ポケットホールは汎用性の高い接合方法と思われがちですが、以上のようなメリットとデメリットが存在するため適切に使い所を選ぶ必要があります。ポケットホールの使用が適しているのは以下のようなケースです。

構造的な強度が得られるケース

机の幕板や引き出しなどのように構造的に強固な形状であれば接合強度の重要性が下がるためポケットホールが有効にです。また幕板や引き出しなどはポケットホールのビスの位置も隠しやすいためポケットホールが最も適したケースと言えます。

強度が求められないケース

ボンドで木材同士を張り合わせるまでの仮止めや、そもそも強度が求められないケースではポケットホールの多くのデメリットを無視することができます。

まとめ

木材同士の接合においてビスを斜めに打ち込む手法は昔から存在します。ポケットホールは決して突飛な接合手法ではありません。一方で特に趣味の木工家には邪道のような扱われ方をされたり、嫌われたりする所以は初心者にも適しており汎用性があるようにアピールしつつ、実際には使い所をしっかりと選ぶための最低限の知識が必要になる点や高価な専用ビスを使わざるを得ない仕組みがしっかりと出来上がっている点にあるでしょう。

使い所をしっかりと選び、必要に応じて安価なネジを代替することでより良い作品作りにつなげることができます。

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