大変便利なポケットホールジョイントの唯一の欠点が専用ビスが高価であるという点です。この専用ビスの代替品となるものは存在しませんが、いくつかの妥協を受け入れればM3もしくはM3.5のナベワッシャータイプのタッピングビスが代替品として使用できます。流通はそれほど多くありませんが一般的な規格品でありネジ屋さんや通販でも見つけることができます。
ナベワッシャー以外にもシンワッシャーやトラスワッシャーといった代替品になりそうでならないタイプのビスも存在します。高価なポケットホール専用ビスの特徴は以下の通りです。
- ナベワッシャータイプの9mm未満のネジ頭形状
- 手前の木材にネジが効かない半ネジ
- 樹種によって使い分けられる粗目・細目
- 下穴不要のセルフタッピング
1番目のネジ頭の形状はワッシャータイプの形状をしています。一般的に流通する規格のネジのなかでこれに合致するのが「ナベワッシャーヘッド」や「トラスワッシャーヘッド」「シンワッシャーヘッド」と呼ばれる形状のネジです。しかし、残念なことに「トラスワッシャーヘッド」や「シンワッシャーヘッド」は呼び径が4mm、つまりM4規格のネジしかありません。M4ネジのワッシャーヘッドは9mm~11mmの直径があり、ポケットホールに使用するには直径が大きすぎます。唯一選択肢に残るのがM3やM3.5の呼び径が選択可能な「ナベワッシャーヘッド」です。(なお、ポケットホール専用ビスはM4ですが頭の直径が小さい専用設計となっています。)
2番目の半ネジ構造は、ポケットホールに使用するような短めのビスでは選択肢が限りなく少なく、先ほど紹介した「シンワッシャーヘッド」であれば選択肢があるものの先述の通りヘッドの直径が大きすぎて使うことができません。半ネジでなくても下穴を開ける一手間を加えたり、ポケットホールの穴を開けるときに先端の下穴錐が木材端ギリギリに届くように気をつかうことで問題なく接合することが可能です。
3番目の粗目と細目のピッチ違いの選択肢は残念ながら一般的に流通するビスでは選択が難しくなります。ただし、一般的に使用されるレベルの木材であれば特段使い分ける必要はありません。使い分けによりポケットホールジョイントの接合強度を最大限高めることができますが、そもそもポケットホール自体の接合強度が低いため使い分けをしなくても大きな影響はありません。
4番目のセルフタッピング構造は、木材用の「シンワッシャーヘッド」のネジには備わるのですが、先ほど説明した通りポケットホールには使用できません。他のネジタイプでもセルフタッピング構造を備えたネジが存在しますが、先端が鋭角でないものなど木工に適さないケースが多く、こちらも諦める必要があります。下穴を開けない相手側の木材が割れやすそうなら下穴を開けるなど、一手間加える必要があります。
以上の4点を満たすビスは一般の規格には存在せず、消去法で冒頭で紹介したナベワッシャータイプのタッピングビスが残る形になります。あまり強度を求めないときはナベワッシャータイプを使用し、重要な場面では専用ビスを使うという風に使い分けても良いかもしれません。