【野地板・バタ角】安い「生木」をDIYで活用!メリットとデメリット、注意点とは?

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野地板(のじいた)やバタ角(ばたかく)と呼ばれる安い木材があります。

ホームセンターで手に入る木材としてはダントツの安さを誇りますが、その安さには理由があります。特にDIYや趣味の木工、セルフリフォームでこうした木材を使う時にはその特徴を知らないと後悔をすることになりかねません。

ここでは、こうした木材が「なぜ安いか?」「何が悪いか?」「どうしたら作品作りに活用できるか?」という3つのポイントについて解説します。

なぜ安いか?

安いものには理由があります。

野地板やバタ角の多くは国産の杉です。最も安価かつ大量に供給されており、建材や土木関連を中心に幅広く使用されています。野地板やバタ角として販売される杉は、節が多かったり径が細い間伐材が中心で、木の品質自体に問題があるわけではありませんが加工と仕上げ工程がスキップされています。

通常の木材は以下のような工程を経て建築現場やホームセンターを通じて私たちの手元に届きます。

  1. 皮を剥ぐ
  2. 製材する(用途にあわせてざっくりとカット)
  3. 乾燥(一般的には機械を使った強制乾燥)
  4. 加工(寸法に合わせた切断)
  5. プレーナー加工(表面仕上げ)

野地板やバタ角はこうした乾燥や加工工程をスキップして流通する木材を指します。上に説明した工程でいうと2番の工程を終えた時点で出荷された木材です。

通常の木材のように、角は直角が出ておらず、寸法には誤差があります。皮の入りやむしれもあって、実際に使い物になるのは寸法より少ないです。更に水分を多量に含んでいます。どれくらい水分を含んでいるかというと、野地板を切断していると冷たい水の飛沫が舞うほどです。

これは決して悪いことではなく、造作や木工作品作り以外の、木の狂いや仕上がりの悪さを求めないシーンでは安くて大量に手に入るため大変需要があります。また、通常の木材としての活用が難しい間伐材などを有効活用することにもつながります。

何が悪いか?

なぜ安いかがわかったところで、何が悪いかを解説します。これまで説明した通り、野地板やバタ角の問題点は以下の3点です。

  • 含水率が高い(未乾燥)
  • 仕上げが悪い
  • 質が低い
1.含水率が高い(未乾燥)

木材とそこに含まれる水分は、どのような用途においても切っては切り離せません。

生きている木は常に水を根から吸い上げ、木の中には多量の水分が含まれています。これが伐採されて、人工的あるいは自然に乾燥されることで樹種によりますがおおよそ15%程まで低下します。こうして十分に水分が抜けた木は「乾燥済み」と判断されます。面白いことに木の含水率はある一定の値まで下がると、その近辺で安定します。例えば含水率が15%まで落ちた木を水に沈めたところで、そう簡単には30%、40%とは上がっていかないのです。

野地板やバタ角は含水率が高く、乾燥が済んでいない「生木」です。購入してから数週間から数か月、あるいは数年という時間をかけて水分が抜けていきます。この過程で生じるのが「反り」や「捻じれ」、「割れ」です。

反り・捻じれ・割れは木の特徴のひとつではありますが、未乾燥の木材を使うということはその症状がより一層強く表れることになります。つまり、乾燥する過程で大きな反りや捻じれが起こることを見越して慎重に用途を判断する必要があります。

更に、オイルや防腐剤・防虫剤と言った浸透系の塗料を使用しても新たに生じる割れには無意味なため、結果的に腐食しやすいことにもつながります。ペンキを始めとした造膜系の塗料を使っても、塗膜のひび割れや剝がれが起きやすいです。木材専用の塗料であっても、乾燥が済んでいない生木への塗布は効果が薄れるとメーカーが注意を促しています。

2.仕上げが悪い

野地板やバタ角は、製材所でざっくりとカットされてそのままホームセンターなどの店先に並びます。ここで使われるのは大型の帯鋸であることが多く、当然断面は切断の跡が残っています。

これはざらつきというレベルではなく、「段々」と表現した方が良いでしょう。80番や40番などかなり粗いサンドペーパーを使っても、これを平坦にすることは難しいです。特にオービタルサンダーやランダムアクションサンダーといった仕上げ用の工具ではいつまでたっても平面を出せません。

こうしたざらつきを気にしないのであれば構いませんが、そうでなければ通常の木材と同じように自身で仕上げる必要があります。仕上げの方法としては主に以下のようなものがあります。

  • 手押しカンナや電気カンナによる平面と直角出し
  • 自動カンナによる表面のかんな仕上げ
  • ベルトサンダーやディスクグラインダーによる研磨仕上げ

もし野地板やバタ角を通常の木材と同じように仕上げたいとなった場合には手押しカンナや電気カンナが必要です。手押しカンナで1面の平面を出し、これを基準にもう1面の直角と平面を出します。更に自動カンナで残りの2面を仕上げます。ここまでやれば市販の木材と同様に直角も出ており表面もツヤツヤと綺麗です。

もし正確な直角は出さなくても良いから表面の粗を取りたいということであれば、ベルトサンダーやディスクグラインダーにサンドペーパーを取り付けて研磨します。オービタルサンダーやランダムアクションサンダーとは違って、極めて粗い粗削りですが、ざらつきも段々も取り除くことができます。

3.質が悪い

野地板やバタ角は、ここまで紹介した「乾燥」と「仕上げ」の問題をクリアすれば普通に使えるという訳ではありません。なぜなら元から綺麗に仕上げて使うことを前提としていないため、皮が入っていたり、端っこがむしれていたり、カビが生えていたり、虫食いがあったり、節が多かったりします。そのため頑張って時間をかけて綺麗に仕上げても、期待外れな出来栄えになることもあります。

小綺麗な仕上げを求めないシーンや、目に見えない部分に使う。あるいはペンキなどで完全に塗装して使うなどよく使い道を考える必要があるでしょう。

どうしたら作品作りに活用できるのか?

いろいろと悪い点を紹介しましたが、そうはいってもこの安さは魅力!ということで野地板やバタ角を活用する方法を紹介します。

方法1.木材として仕上げる

一つ目の方法は、先ほど説明したように電気カンナなどの各種ツールを使用して通常の木材と同じように仕上げる方法です。

つまり、安く木材を買う代わりに、その分の手間をかけて仕上げてやろうというわけです。本末転倒な気もしますが、DIYを楽しむという意味では大いにアリではないでしょうか?ただし、その後の乾燥工程と乾燥後の再仕上げが必要になるため、本当の意味で通常の木材と同じように仕上げるには年単位の時間がかかります。

ある程度手順をショートカットして仕上げるのであれば以下のような手順をおすすめします。

乾燥

まず始めに野地板やバタ角を地面から浮かせて並べて乾燥させます。

適当な木材の切れ端などの上に置いて、重ねる場合には角材などを渡して野地板同士が触れないように積み重ねます。バタ角の場合には、割れの位置を誘導し、乾燥スピードを速めるために背割り1を入れるとなお良いです。乾燥工程は、屋外の雨ざらしでも構いませんが、屋根がある方が良いでしょう。もちろん室内でも構いません。扇風機などで風を当て続けると乾燥スピードが速まります。

乾燥具合を数値で知るには専用の機械が必要ですが、手触りや重さでも判断することができます。同程度の木材と比較して持ち比べてみると良いでしょう。市販の機械では計測する面によって数値のブレが大きいなど「目安」程度の精度しかないことに注意してください。乾燥すると、手触り自体がしっとりと冷たいものから木のぬくもりを感じるものへ変わっているはずです。

野地板であれば1~2週間、バタ角であれば4~6週間ほどおくとそれなりに乾燥します。通常の乾燥済みの木材のように安定するほどではありませんが、初期の急速な乾燥はこれくらいの期間で完了します。

プレーナー掛け

次に手押しカンナか電気カンナで平面を出して、更に直角を出し、自動カンナで仕上げます。

治具を用意することで自動カンナを使って最初の1面を出すこともできますし、更にテーブルソーなどを使ってもう1面の直角を出すことも可能です。

もし正確な直角が不要であれば、ディスクグラインダーやベルトサンダーなど研磨力に優れる方法でガンガン表面を削って納得できる仕上がりになるまで研磨すればOKです。

ここまでくればあとは通常の木材と同じような形で使うことができます。

方法2.そのまま使う

2つ目の方法は、こうした野地板やバタ角といった生木のデメリットを無視してそのまま使う方法です。

デメリットが多すぎて難しく感じるかもしれませんが、実はそうでもありません。確かに塗料を塗っても割れたり反ったりしますが、例えばウッドフェンスやウッドプランター、レイズドベッドを始めとした木のガーデン用品のように、そこまで見た目の粗さが気にならないシチュエーションも多いです。

ウッドフェンスに使う場合は、きちんと木裏を使って適切にビス止めすれば反りが気になることも少ないでしょう。インテリアの一部や壁のアクセントして使う場合でも、十分に研磨したり、塗装を施せば荒々しいインダストリアルな雰囲気やアンティークな雰囲気にマッチする部材にすることも可能です。

塗装も割れが出たり、塗膜が剥がれてしまったとしても、その部分だけ磨いて塗りなおせば十分です。腐ってしまっても、その部分だけ張り替えれば十分でしょう。

こうして割り切って使う分には、野地板やバタ角は十分な素養を秘めています。

  1. 背割り:太い角材の乾燥の促進と割れの誘導のために、角材の4面のうち1面に深い切れ込みを入れます。これを「背割り」と言います。もちろん2面、3面、4面、と切り込みを入れる面を増やせば乾燥しやすくなりますが、使用時に表面に切れ込みが見えると不格好なため1面にだけ入れられることが多いです。背割りを入れるのは、割れやすい木表の反対の木裏ですが、「バタ角」はほぼ芯の真ん中なので向きを気にする必要はありません。 ↩︎
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