【曲げ木】DIY可能な木を曲げる3大手法を解説

木工

木を曲げることでインパクトある美しい作品を生み出すことができる「曲げ木」。曲げ木には大きく分けて4つの手法があり、そのうち3つの手法は趣味レベルのDIYにも取り入れることができます。今回はこの3つの手法をそれぞれ紹介します。

1.加熱による曲げ木

1つ目の方法は木を加熱する方法です。大きな鍋でぐつぐつと木を煮たり、水を沸騰させた蒸気を半密閉容器に送り込んで加熱する方法が主流です。共通しているのは「水」を使用している点ですが、これは乾燥により不足した水分を補いながら、熱を効率良く・ムラなく・焦がさずに伝えるために水と熱を同時に使用するのが効率が良いからです。

木の細胞は「リグニン」と「ヘミセルロース」と呼ばれる成分で密着しています。これが伐採後間もない生木では水分を含み柔らかさを保っています。そのため生木は柔軟性に富んでおり、曲げてもすぐに折れることはありません。一方で乾燥済みの木材はこの柔らかさを失い、硬く強固になっています。これを緩めるために熱が必要であり、不足している場合には水分が必要です。

この熱と水を同時に効率良く与える方法が一般的な「加熱による曲げ木」では採用されます。オーブンレンジを使ったり、ストーブや衣服用のアイロンを使う方法など、その手法を細分化するとキリがないほどです。ポイントは木全体を表面から奥までしっかりと加熱することで、手段は問いませんがDIYで人気があるのが「鍋で煮る」「スチームクリーナーで蒸す」「衣服用アイロンを使う」の3つの方法です。

1-1.鍋で煮る

鍋で煮る方法は、木が発火したり焦げたりする心配がなく、比較的危険度の少ない方法です。

ガスコンロやIH調理器具が使用できるため、扱い慣れた道具で挑戦できる点もメリットのひとつと言えます。しかし、鍋に入る木材の大きさはせいぜい30cm程度で特注の細長い鍋などを用意しない限り、大きな作品には適しません。

1-2.スチームクリーナーで蒸す

個人で比較的大きな木材を曲げたい場合によく採用される方法です。

曲げたい木が収まるサイズの木箱を自作して、そこにスチームクリーナーの吹き出し口を差し込みます。これだけでは箱の中が加圧されて危険なので、小さな穴をあけて蒸気を逃がします。また、水滴になった蒸気が箱内に溜まるので底面には水抜き穴も必要です。

スチームクリーナーはリサイクルショップなどに行けばケルヒャーなどの有名メーカーのものであっても1万円以下で購入することができます。あまりコンパクト・安価なものでは十分に加熱できないことがあるので注意が必要です。

加熱された木材の温度は水の沸点である約100℃近くまで達しますが、実は木を曲げる場合には100℃という温度は低く、厚い木材や強い曲げには適さない方法です。

1-3.衣服用アイロンを使う

特に小さな木材や薄い木材に適しているのが衣服用アイロンを使用する方法です。

直接当てた場合には焦げが出ることがあるので、湿った布を木に巻き付けたうえからアイロンで熱します。温度は「高」を選択します。他の方法に比べて手軽に高温になりますが、アイロンを押し当てた部位しか熱することができないというデメリットがあります。そのため広範囲を曲げることは難しく、アイロンを押し当てながら木を型に押し付けて少しずつ木を曲げることになります。

加熱時間について

加熱時間は一般的に1mmあたり3分程度と言われています。5mmの厚さの木材であれば15分と考えることができます。ただし、手作りの道具を使った加熱では十分に熱をいきわたらせることができないため、より長い時間が必要になります。これは実際に試行錯誤しながら丁度良い時間を見付けていく必要があります。10mm以下の薄い木材であれば30分、10mm以上の木材であれば1時間加熱し、一旦取り出して曲げてみて様子を見ると良いでしょう。

2.薬品による曲げ木(非推奨)

2番目の手法は薬品を使った曲げ木です。

個人でも比較的簡単に実行可能ですがあまりおすすめしない方法です。

特にアンモニアを使った曲げ木は100年ほど前に発見されて以降広く採用されています。アンモニア以外にもアルカリ性の薬品を使うことで木の繊維内の結合を緩めることができます。薬局でも手に入りやすい「水酸化ナトリウム」(「苛性ソーダ」とも呼ばれる)や「水酸化カリウム」(「苛性カリ」とも呼ばれる)や「アンモニア」を使う方法が一般的です。最近では薬局での取り扱いも減り入手性が悪くなっています。

「水酸化ナトリウム」の場合には10%程度の濃度の溶液、「アンモニア」の場合には20%程度の溶液に木を浸します。なお、「水酸化ナトリウム」や「水酸化カリウム」は水で薄める際に発熱する特性があります。突沸の恐れもあるため扱いには注意が必要です。こうしたアルカリ性の薬品を使い、木材の細胞同士をつなぐ細胞間物質を軟化させます。

アルカリ性の溶液が木材から抜けた後は元通り硬化します。この作用は髪の毛のパーマなど同じようなものです。ちなみにこの作用を利用して、木を粉砕して木質ボードなどを製造しています。常圧で含侵させる都合から、あまり厚い木材には対応できません。

常圧・常温下であれば危険は低いですが、加圧したり加熱するには専門的な知識と設備が必要です。いずれも非常に強いアルカリ性で、眼はもちろんのこと皮膚についても危険ですので取り扱いに注意が必要です。樹種や部位によりますが、2cmくらいを超えると常圧ではなかなか内部まで薬剤が含侵せず、木も水を含んで扱いづらくなります。溶液の管理も含めて簡単なようでいて個人が趣味で扱うにはあまりおすすめの方法ではありません。

強アルカリ性ということで、強アルカリ性を謳い文句にした洗剤や、排水溝の詰まりとりとして話題になった「ピーピースルー」なども曲げ木に使うことができるかもしれません。

中和処理について

中和処理については諸説ありますが「人体へ危険がないようにする」という意味では十分に水で洗い流せば十分です。例えば、以下のWebサイトでは3~5%の過酸化水素水で中和処理するという手順が記載されています。

Wood Bending by Chemical Softening

実際には強アルカリ性の洗剤と同程度のアルカリ性溶液を使用しているので、特別な中和処理は必要ありませんが、十分に水で洗い流してください。この時にも溶液が飛び跳ねて皮膚や眼に入らないように細心の注意を払う必要があります。

以下のようなシチュエーションでは中和処理をした方が楽になります。

  • 形が複雑で入り組んでおり十分に水で洗い流せない
  • 大量に曲げ木を行っており1つ1つ洗っていてはキリがない

後者は主に大量生産の工場のようなケースで、酸性の水溶液を溜めたプールに入れて中和させます。

3.重ね合わせによる曲げ木

1~2mm程度に薄くスライスした木は、なんの加熱や薬品を使わずとも簡単に曲げることができます。

これを活かして、薄くスライスした木を自由な形に曲げ、これを何枚も重ね合わせてボンドで接着することで曲げ木を実現する方法が「重ね合わせによる曲げ木」です。強度もありべニア(ツキ板)を使用して多種多様な形状やデザインに対応できることから1番目の加熱による曲げ木と並んで採用される手法です。

加熱も薬品も不要な手軽な方法ですが、好きな木材を薄くスライスしようとするとバンドソーやテーブルソーといった工具が必要になります。多量の薄板を切り出そうとするとテーブルソーでは刃の厚さがあるため無駄が多く、現実的にはバンドソーが必要です。更にバンドソーの切断面はそれほど綺麗ではありませんので、自動カンナなどで綺麗な平面を出してやる必要があります。

シンプルな方法ですが、肝心の「薄くスライスする」という点が意外とネックになります。また、断面はベニア板のように複数の木材が積層した様子が一目でわかるので、必要に応じて処理が必要になります。

曲げ木に適した樹種

曲げ木には樹種によって適性があると言われています。

特に硬めの広葉樹であるナラ、カシ、タモ、ブナ、ニレなどが適していると言われています。

まとめ

国内ではあまり具体的な情報が発信されていない曲げ木を始めとした木工技術も、海外へ目を向ければ様々な試行錯誤の痕跡とプロが発信する情報を見付けることができます。「曲げ木」は英訳すると「wood bending」で、このキーワードで検索することで色々な情報を発見することができます。

英語が苦手な方であればYouTubeなどで検索することで、言っていることがわからなくても手順やイメージを掴むことができます。

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