木材のオイル仕上げに使われる「オスモ」や「リボス」に代表される専用オイルと、メーカーは問わずクルミ油や亜麻仁油などのただの乾性油は何が違うのでしょうか?
いずれもベースになるのは「乾性油」で、その名の通り乾燥して硬化する油です。具体的には空気中の酸素と反応して硬化します。つまり酸化です。
専用オイルとただの乾性油の違い
亜麻仁油やクルミ油、キリ油やエゴマ油など乾性油には様々な種類があります。
私はひまわり油と桐油を使い分けていますが、油は種類によって色の濃さが変わります。桐油は特に色が濃く、オイルで仕上げた際の木の色合いもやや褐色味がかった色合いになって個人的に好んで使っています。桐油は桐の種子から取り出した油で、今はほとんどが中国産です。
オスモやリボス社などの仕上げ用オイルは、こうしたオイルを独自にブレンドしたものです。オイル以外にもいくつかの成分が含まれており、より耐久性や作業性、艶を高める成分が添加されています。
専用オイルが高い理由
オスモやリボスの専用オイルは商品によりますが1リットルあたり1万円前後します。
一方でさきほど紹介したようなひまわり油や桐油などの乾性油は1万円あれば5リットルから10リットル近く購入することができます。一体この価格差の要因はなんでしょうか?
専用オイルの秘密
こうした専用オイルには大きく分けて3つの成分が添加されています。
乾性油を独自にブレンドした上で、更に3つの成分を添加しています。
1. 溶剤
ひとつは粘度を調整する溶剤です。
作業性を良くし、特に低温下でも粘度が上がりすぎず使いやすいようにオイルを薄める溶剤が添加されています。多くの場合は石油由来の鉱物油を使って薄められています。ワックスでは植物油が使われることもありますが、オイル系の製品では石油由来の溶剤を使用することが多いようです。
2. ワックス(蝋)
ふたつ目は艶出しと保護のためのワックスです。
ワックスとは蝋(ろう)のことで、ミツバチの分泌物からとれる「蜜蝋」やヤシの葉からとれる「カルナバ蝋」、そして鉱物性の「地蝋」の3つがよく使用されています。1番目に紹介した溶剤はこのワックスによる粘度の変化を調整する役割もあります。
木部を保護するワックスとして蜜蝋を使われたことがある方も多いかもしれませんが、実は専用オイルには艶や保護性能を高めるためにこのワックスが添加されています。
3. 酸化促進剤
最後は乾燥を促進するための「酸化促進剤」です。
乾性油における乾燥とは酸化を意味しますから酸化促進剤=乾燥促進剤と捉えて間違いではありません。酸化促進剤は鉱物由来の成分が主に使用され、油絵の絵の具を乾燥を早めるのと同じように酸化を促す成分が添加されています。
専用オイルの価値は添加物にあり
これらの添加物のおかげで、ひまわり油や桐油に代表される「ただのオイル」を使った場合に比べて「専用オイル」を使うと作業性が良く、仕上がりも良くなるというわけです。
簡単にあげるだけでも専用オイルには以下のようなメリットがあります。
- 作業の難易度が下がって失敗が減る
- 作業工程を省略できる
- 待ち時間(乾燥時間)を減らせる
- 簡単に仕上がりが良くなる
一方で、乾燥剤を含んでいるため塗りすぎた場合に拭き取りが遅いとギトギトになってやり直しに大変苦労することもあります。塗装経験が少ない場合には、意外にもただのオイルの方が綺麗に仕上げられたりもします。