木工に欠かせない集塵には大型の集塵機から小型の掃除機を利用した集塵機まで幅広い選択肢があります。特に趣味の木工の世界では作業場の面積や予算の都合から小さな掃除機を使用するケースから、本格的な集塵機を導入するケースまで幅広いです。
小型の掃除機では25mm~38mm程度の細めのホース、集塵機ではコンパクトなもので50mm~75mm、比較的大型のもので100mm~150mm程度のホースが使用されることが多いです。ホースの太さはファンとモーターの性能と用途によって決まります。ホースが細すぎると抵抗が大きくファンの性能を発揮しきれません。例えば私の作業場で使用している最大風量毎分30立法メートルの集塵機に100mmのホースを接続すると風量はほぼ変わりませんが、50mmのホースをつなぐと毎分13立方メートルほどまで激減します。細いストローでどろどろした飲み物を飲むのに苦労するのと同じ話で、集塵機においては「静圧」や「最大真空度」などと表記されるスペックを見て判断します。最大真空度はkpaやmm水中で表記されますが、これが大きければ大きいほど細いホースに変更しても風量を保つことができます。この最大真空度と最大風量の関係は、一方が大きければ一方が小さくなる関係です。最大風量が大きいものは風量型などと呼ばれたり、最大真空度が大きいものは静圧型、高圧型などと呼ばれたりします。掃除機のような形状をした小型集塵機などは高圧型が多く、大きな集塵機では風量型が大半を占めます。
ホースが細すぎる場合を除けば、ホースを細くしても太くしてもエネルギーの総量は変わらず、細くすれば風速が上がるものの圧力が低下し、太くすればその反対のことが起こります。そのため基本的にホースは純正品と同じ太さを使用するべきです。自作の集塵機では風量と風速を計測して最適なホースの直径を選ぶか、実際にトライアンドエラーを繰り返してホースの太さを決定する必要があります。
細いホースではまとまった量の大きな木くずなどを吸い込むとホースが詰まってしまいます。これはホースを太くするほか、ファンの性能を向上させることで解決することもできます。ホースを太くしすぎた場合は風速が極端に低下し、木くずが滞留することもあり最適な太さを選択する必要があります。
また途中で太さを変更した場合はエネルギー損失が大きく風速や圧力が著しく低下することがあります。特に集塵機から工具付近まで太いパイプを敷設して、工具付近で細いパイプやホースに切り替える場合にはホース内の風速と圧力の総量が低下して吸い込む力が弱まるだけでなく、風速の低下が集塵機まで続く太いパイプにも影響してパイプ内に粉塵が滞留して詰まる恐れもあります。これを解決するには入念な設計が求められるため、趣味の世界では集塵ホースの直径を途中で変えることは基本的に推奨されません。またホースが長ければ長いほどエネルギーの損失は大きくなり、特に内側が蛇腹状になったホースではその損失が大きく増加します。基本的にホースは極力短くし、やむ負えず長い経路を通す必要がある場合は、内側がフラットになって静電気も抑えられるサクションホースを直線にピンと張って使用したり、ダクトパイプや塩ビパイプ(※)を使用すると良いでしょう。
※塩ビパイプやホースは静電気が非常に発生しやすく粉塵の運搬用途には適していません。静電気が発生すると粉塵がパイプ内に付着しやすく、そこから粉塵が堆積に詰まりの原因になります。ただし、蛇腹ホースをうねうねと長く伸ばすよりはマシな場合が多いです。
サンダーなどの細かな粉塵を集塵する場合は細いホースでも十分ですが、プレーナーなどまとまった木くずが出る工具では50mm以上のホースが必要になります。100mmあれば趣味の木工で困ることはなくなり、集塵フードなどを利用した大風量が求められる広範囲の集塵も可能になります。